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水への想い (2006/12/22)
市民との協働で問題解決を
角田 禮子(かくた・ひろこ)さん
NPO法人関西消費者連合会 理事長
 21世紀のキーワードは「安全安心」「環境」と言われており、社会的に関心が高まっています。しかし、安全安心・環境は、きわめて基本的な生存条件であり、いまさら何をという思い無きにしも非ずですが、それだけ安全安心、環境が脅かされているということの裏返しでもあります。
 太古の昔から安全安心・環境は生きていくうえでの絶対条件であり、私たちは視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感でそれを感得し、「生きる知恵」として連綿と受け継ぎ、今日の社会を形成してきました。安全安心への鋭敏な感覚に支えられて文明が進化し、平均余命が延び、生活環境が改善されてきました。
 私たちは、食の安全から物品購入・取引等にいたる暮しの事柄に、生活者の視点から問題を提起し、啓発啓蒙はもとより、要望・陳情活動を通じて暮しの安全安心の確保に努めてきました。今も私たちは力を合わせ、その活動を展開しております。


下水道管陥没は暮しの問題

 下水道管に起因する道路陥没は全国で年間約6,600件(平成17年度)発生しており、下水道政策研究委員会計画小委員会の中間とりまとめによると、「その約6割は人身事故等につながる可能性のある重大な陥没であり、主たる原因は管路の老朽化である」と指摘しています。
 私たちNPO法人関西消費者連合会は4、5年前から、下水道行政のOB、現役等で構成されるNPO法人水フォーラム21と情報交換、研究会等を行っており、それらを通じて、この問題が及ぼす市民生活への影響の大きさを知りました。そして、下水道関係から招かれての講演やパネルディスカッション等で問題点を繰り返し指摘してきました。大阪府消費者研究発表大会では、「下水道からみた水環境問題」と題して発表したり、主婦連の全国大会においても、下水道管の問題を呼びかけています。皆さん「身近なところにそんな問題があるんですか!」と認識を新たにされ、関心を寄せています。
 下水道は、私たちの生活排水を処理し、きれいな水にして河川、湖沼、海域に戻す水循環の担い手であり、水道の蛇口からおいしい水が飲めるかどうかは、下水道の普及、処理の如何にかかっていると言ってもよく、「おいしい水は下水道整備から」と話しています。また、水環境が良くなれば草花、昆虫、野鳥、魚類等生きとし生けるものとのふれ合いを通じて豊かな感性が養われるでしょう。社会教育の視点からも、下水道の役割・機能を評価すべきだと考えています。
 浸水対策、合流改善をはじめ処理水の再生利用、下水汚泥の有効利用、さらには消化ガス、水位差等によるエネルギー利用は「資源循環のみち」そのものであり、下水道は社会にとって「とても大きな働きもの」であるということも、私たちはよく承知しています。

 このように下水道の役割を高く評価するゆえに、暮しを脅かす道路陥没問題については指摘せざるを得ないのです。身近な生活道路、子供たちの通園通学路等にも下水道管は埋設されており、それらの道路がいつ何時陥没するかも分からない状況は、安全安心を持ち出すまでもなく道義的にも許されないことだと思います。鉄道軌道下、幹線道路下にも下水道管は布設されており、それらについても、どのような安全対策を講じておられるのか気になっております。


管路情報開示による協働を

 私たちは下水道管路の情報開示を求めています。足許の生活道路・通路がいつ陥没するかも知れない状況のもとで暮らしていて、そのことが当人にまったく知らされていないという事実は、朽ちかけた橋の上を目隠しで歩かされているようなものではないでしょうか?
 情報開示がなぜ必要なのか。暮しの安全安心にかかわる情報は行政の「所有物」でも「保管物」でもなく、住民に帰属する「市民権」の一部だと思うからです。住民への危害情報は行政の裁量権の埒外であり、それを取り違えて老朽劣化の管路情報を一人独占する行政当局の感覚はいかがなものか。どこを向いて仕事をしているのかと問いたい。
 管路ハザードマップ(危険情報)の公開を求めると、必ずと言っていいほど「混乱を招きかねない。タイミングを見て慎重に」という返答に終始します。必ずしも行政当局より市民が劣っているとは言えず、むしろ情報化社会の知識によって優れた判断力を有する市民が少なくありません。ぜひ、安心して管路情報を開示していただきたい。
 その情報開示によって、行政と市民が問題意識を共有し、管路管理計画等への市民参加による「官民協働」の取り組みが実現するのではないでしょうか。情報開示は行政と市民を結ぶ架け橋だとの認識のもと、市民の目線で考え、情報を共有しつつ市民との二人三脚で安全安心のライフライン(下水道管路)を構築していただきたい。


消費者の権利として

 アメリカのケネディ大統領は1963年(昭和38年)に消費者には「選ぶ権利」「安全安心を求める権利」「意見を反映させる権利」「知る権利」の四点の権利を提唱されました。この消費者の権利実現は、今も私たちのテーマです。下水道についていえば、管路問題だけでなく、計画策定から建設、維持管理にいたるまで、実にさまざまな課題を抱えていると思います。
 CO2の排出問題をはじめ、騒音・振動、臭気さらにはダンプカー・トラック等の搬出入による地域社会への影響など、地域社会の負担を軽くしていかに環境にやさしい下水道システムを構築するかに心を傾けていただきたい。単なる机上の計算による費用効果で安易に割り切らず、もっとも過酷な影響を受ける地域住民の立場に立ったリアリティのある対応を望んでおきたい。
 また、予算や財源措置を理由に環境面や地域社会等を軽視することなく、消費者の権利を胸に刻み、誤りのない対策・対応を講じていただきたい。
 真に心豊かな生活環境が実感できるかどうかは、下水道の役割・機能にかかっていると思います。それだけ市民の下水道に寄せる期待が大きいということを真摯に受けとめ、市民との協働による安全安心のライフラインを実現していただきたいと願っています。

(月刊下水道2007年1月号VOL.30 No.1)
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