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『下水道の考えるヒント』(在庫切れ)
『下水道の考えるヒント』

著者:中里卓治 体裁:新書判216ページ 定価869円(税込・送料別)

 『考えるヒント』を書いた小林秀雄は、物を見ないで知ったかぶりをする人を極度に嫌った。徹底して自分の目で物自身を見、自分の頭で考えよという人だった。小林秀雄の姿勢は、下水道事業に携わる多くの人たちのために書かれた随筆集である本書にも共通する。同じように、物を見よ、そして考えよ、と語りかける。
 本書は、月刊下水道2005年8月号から2008年12月号まで3年半にわたって好評連載した「アフタヌーンティ」を大幅加筆修正し、「第一章 マネージメント」「第二章 技術開発」「第三章 自己啓発」「第四章 危機管理」「第五章 自然発見」の構成で再編集したものだが、著者自身も本書の中で実に多くの物を見ている。旭川市の旭山動物園、川崎市の家電リサイクル工場、JR神戸駅の無水トイレ、ニース市の信号機、横浜市の大道芸、ニューヨーク市の救急車、マレーシアのクアラ・スランゴール地方の蛍……。そして、それらの物を見ることを通して、考えを巡らしている。
 例えば、旭山動物園では、直径2mはある太い透明なパイプの中をアザラシがくぐり抜けるのを見て、「動物の視点」という行動展示のコンセプトを掴み取る。また、横浜市野毛の大道芸では、やさしい技を難しく見せるのが大道芸の腕の見せどころだと看破し、難しい仕事とやさしい仕事のやり方、あり方に思いを広げている。
 深い感銘を受けるのは、「第三章 自己啓発」の最初に置かれた「倒木更新」という随筆である。朽ちて倒れた老木にも新しい生命を育むための役割があることを披瀝し、この力みのない自然の現象にこそ、若い世代に技術が伝承されるヒントがある、とさり気なく述べている。
 随筆集であるから小説のような盛り上がりはない。また、筆致は自らの感情を抑えて淡々としている。だが、この一文は間違いなく本書のクライマックスと言えるだろう。本書における最大のテーマがここにあると言っていい。この文章には著者の覚悟を感じる。団塊の世代に属する著者の、すなわち老木としての覚悟である。
 団塊の世代の大量退職で技術の伝承が取沙汰されている。これまで下水道事業を支えてきた世代が若い世代に伝えていけるかどうかが問題であるのはたしかだが、それがこの問題の本質ではない。物を見よ、そして考えよと語りかける著者は、それ以上に、技術を産み出すための発想を育てていくことの大切さ、そしてそれを伝承していくことの大切さを、本書を通じて強く訴えている。
(2009/06/26)
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